2005年03月29日

曽祢まさこ「呪いの招待状9 幸福狩り」

ぶんか社ホラーってどうにも微妙な気がするのは私だけだろうか。
「呪い」シリーズは(初期はまさに「呪いのシリーズ」というタイトルだった)最初は朝日ソノラマのハロウィンで連載されていたのが、廃刊に伴い、スコラ社のLCミステリーに移動。そこも廃刊となり、最後にたどり着いたのがぶんか社ホラーM(ミステリー)。
もうなかよしでウケる作風じゃないから仕方ないとはいえ……まぁ、いきなりマーガレットやボニータに移ってもかなりびっくりだけど。

いつの間にか「呪い」シリーズも10年が経過したようで、蔵書コンプリートしている自分も何だかなというところ。
でもおもしろいんだからしかたない。
よく描き続けられるなと感心する。今のところネタブレもないし。
簡単に「呪い」シリーズのことを説明しておくと、

殺したいほど憎い相手がいるなら、呪術師のカイを訪れるといい。
彼がかわりにそいつを消してくれる。
ただし代価は10年の寿命。
残りの寿命が10年以下なら、呪殺の翌日、死ぬことになる。

というわけで、カイに呪殺を頼みにやって来る人間たちの闇を、だいたい1話形式で描いている。
ちなみに「笑ウせえるすまん」のように、殺してもらったものの心のすきまがさらに広がる……という展開もなくはないけど、たいていはさっぱりしているのが好感を持てる。
今回の新刊(といっても半年前に出ていたのに気づかなかった)では、カイの仲間のサラの出番がいつになく多いので、ちょっと見もの。
カイのところでは人形のマリー(100年前に死んだフランス人の女の子の魂が入っている)がお茶を出してくれるけど、サラさんは自分で出してるような?
意外だ……美青年とかはべらせてそうなのにな。
それから影はいつ使うんだろう(カイの人種は影という使い魔をそれぞれ持っている。カイの影は黒猫)。サラは占い専門だからあまり出番がないような……影は銀の狐というところまではわかってるけど、絵で出てきたことはない。
さらに気になるのは、サラの占いの代価が現金であるということ。
カイや夢使い(カイの友人で夢に関する悩み相談を受け付ける。影は白い鳥)は寿命をとってて、それをあとで現金に換えるそうだけど、するとサラはその逆?
まだまだ謎の多いサラ。
今後も出番を増やしていってほしい。
作者自身による同人誌でのネタバレはイヤだな……でもあったら買うと思う。

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松本洋子「黒の輪舞(ロンド)」

松本洋子……大好き。
もう私のホラー・サスペンス好きの原点ともいえるお方。
7歳ぐらいの頃にはもうはまっていたような。

その中でも「黒シリーズ」は記憶にしっかり食い込んでいる。
「黒シリーズ」は3つの作品から成る。
発表順は以下の通り。
「黒の輪舞(ロンド)」昭和57年
「黒の組曲」昭和58年
「黒の迷宮」昭和59年
私が雑誌で読んだのは一番最後の「黒の迷宮」。
でも通読してもっとも好きなのは「黒の組曲」かな……ストーリー仕立てといいシチュエーションといいオチといい、どれもすばらしく私好み。
他の作品に比べるとヒロインとその相手との間の絆が深いのも印象的。

「黒の輪舞」だけコミックで持っていなかったので、文庫版(講談社漫画文庫)の古本を買ってきた。
本当はひばりだかこまどりだかが出てくる作品が同時収録されたコミック版(なかよし)がほしかったんだけどね……まあ、応急処置的に。
いやしかしなつかしい、「黒の輪舞」。
「黒シリーズ」全体を通じたモチーフは「黒魔術」とか「悪魔学」なのだけど、たぶんシリーズの中では「輪舞」の悪魔集団だけちょっと異色。
リーダー的存在ナルダは「気がふれてた」の一言で説明がついているし、主人公エリーを本物のブラッククイーン(魔女の女王)と決定づけたブラックスターも、「そんなものはただのアザだ」と一蹴されている。
そんな偶然ばかり重なってるのはちょっと苦しい気も。
結局、エリーの悪魔的かと思われた能力は、「不安な子ども時代が生み出したもので、憎しみではなく悲しみから発生するもの」というところに落ち着く。
で、
「君はただひとりぼっちになるのがこわかっただけなんだ
だったらぼくがそばにいてやる 一生だ!
きみは失うことにおびえなくてすむ
もうその力をつかう必要はないんだよ」
……って、ラウル! あんたいつどこでエリーにそんなに惚れたんだ?
15の身空でそんな一生の約束をしておいてうっかり心変わりなんかしたら、そりゃもう大変じゃん……やめとけ。
というか、この学園、共学のはずなのに、ラウル以外の男子生徒がほとんど出てこないよ。
パーティーのシーンでちらっと見れるぐらい。
ラウルも1年生なんだろうけど、同じ学年の親友がいたりしたらおもしろかったのになぁ。
その親友と「なんでそこまであの子に惚れこむんだい」「理屈じゃないさ」ぐらいの会話があれば納得できた。惜しい。
それと、この学園寮の配置も気になる。
1号館から6号館まで財産と身分によって振り分けられてるらしく、もちろん1号館は教師も特別扱い、「奨学生や問題児」は6号館ということになっているが、すると5号館あたりはすごく微妙な立場なんだろうな……。
奨学生なら成績はいいだろうし、問題児にだってお金があって身分の高い人はいるだろうし。
5号館まではひたすら財産での振り分けだから、ある意味6号館より居心地わるいんじゃ。
3号館あたりがいちばん無難なのかな?

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2005年03月27日

日渡早紀「GLOBAL GARDEN」最終巻

やった新刊だ! と喜び勇んで買ったら最終巻だよ……ショック。
が、これ8巻なのだが、7巻を読み返したらしっかりと「次が最終巻です」と書いてあった。
花ゆめは今では裏表紙にあらすじも載せてあるので、そっちにも思いっきり「感動の最終巻!!」と書いてあるし……。
もっとちゃんと読めよ私。
まあ、中表紙がアインシュタインでE=MC2(二乗ってどうやって変換するの?)と描いてある絵だったので、まさか、とは思ったけど……やっぱ悲しいなぁ。

全8巻ということで内容を説明するとむちゃくちゃ長くなるところを無理に縮めると……
主人公涙花(るいか)は、この世を司る世界樹(ユグドラシル)を完全復活させるために欠かせない少女。
アインシュタインの遺言を遂行すべく、薬の力を使って異様に長生きしているヒカルとハルヒが涙花を取り合う。
というのは、グローバル・ガーデンの世界樹のもとにいるスクルドに頼めば、願いを1つかなえてくれるから。
その過程を見守る謎の少年ロビンは、なんとヒカルとアインシュタインのDNAをミックスさせたクローン人間だったりする。

……という感じ(これでいいのか)。

ちなみに涙花とラブるのはヒカル。
ヒカルはアインシュタインの遺言をかなえてもらうためにガーデンに行きたいが、ハルヒはそれより自分の願いをかなえてもらいたい。
というわけで作中、ハルヒはほとんどどうしようもないキャラ。
ぶっちゃけヘタレで……ヒカルより私はハルヒ派。

しかしだ。最終巻はマジで泣くかと……やばかった。
最後の数ページまであんまり救いがなくてそれだけで悲しかったけど、ある箇所から「なるほどね!」と一気に納得。
すごい伏線だ……さすが「ぼくの地球を守って」を描いた日渡早紀だ。

アインシュタインを題材に扱っているということで、内容は広島の原爆についてもふれている。
クライマックスの導入部で原爆ドームも出てくる。
原爆の原理となる公式を思いついてしまったアインシュタインって、戦後、どんな思いで生きていたんだろう……と、長年、私もぼんやり考えていた。
そのあたりの描写があったので、絵や展開のわりにはリアルな作品ともいえる。
最終巻では特に「アインシュタインと原爆(戦争・人間の悲劇)」のモチーフに重点がおかれている。
アインシュタインがフロイトに手紙を出して聞いたそうだ。
「何故戦争は起きるのか? それは人間の心の問題ではないだろうか。
それが抗えない欲だとしても 心理学者のフロイトなら
『憎悪と破壊』という心の病に冒されない為の方法を探せるのでは――?」
フロイトの返事は以下のとおり。
「無理です。結論です。本能ですから」
これ、実話らしい。さすがだフロイト。容赦ない。
で、作中での「アインシュタインの遺言」とは……
「だったら、進化するしかない。
人類を進化させたい」
「どうか無意味な戦争が失くなるように
精神的に進化した 他者を認める本能を携えた 新しい人類が誕生しますように」
(実際には、アインシュタインの遺言は、つきそった看護婦がドイツ語を解さなかったため、今なお謎とされている)
……で、ラスト、子どもたちの会話。
涙花の息子が宇宙論について語ると、友人はあきれた顔をして、
「…うーん…(※相手の言ってる意味がよくわからない)
でも…まあなんつーか その――お前の話って面白いよ」
「じゃ もっと話そうよ」
4分の1スペースにもあったけど、そうだね、たくさん話をしたい。
戦争するより、話した方が何万倍もいいに決まってる。
話して、認めあったり、人の意見を聞いて自己批判したり、多様性を認識したり、そうした能力が伸びれば、ムダな戦争はなくなるんじゃないだろうか。
実際にはそんな簡単なことじゃないだろうけど。
そもそも話しあうこと自体が意外に難しかったりするから。
でも1人1人がそういう意識を持てればいいなぁ……と願う。
まずは自分から。
というわけでBGMは「ZERO LANDMINE」。原爆じゃなくて地雷だけどね。

あ、世界樹(ユグドラシル)でピンと来る人もいるだろうが、北欧神話からの引用もちょっとだけある。
涙花の変化形として3人の女神的存在が登場するが、その名はそれぞれ、スクルド(未来)、ベルダンディ(現在)、ウルド(過去)。
これがわかるだけでもおもしろい。

以下は日渡早紀作品全般に言えることだが、メインキャラの家庭環境に一貫した作為を感じる。
私が知っているの日渡作品は「ぼくたま」以降だが、「ぼくたま」はモロに家族問題を扱っている。
現世のキャラはわりと平穏だが、前世は悲惨だ。その代表が紫苑(しおん)なのは言うまでもないこと。木蓮(もくれん)も両親とは最終的に死別。紫苑は最初は施設で、後には寮で、木蓮は修道院のようなところで、それぞれ他人に囲まれて成長する。現世の方での重要なキャラ未来路(みくろ)は代理出産で生まれ、しかも実母にうとまれて代理母に引き取られる。そして番外編「偶然が残すもの」を読めば、この代理母に惚れてしまったことで混乱をきたしていることがわかる。
「未来のうてな」では主人公の母親が事故死することからすべてが始まる。父親には実は隠し子がいて……という展開。その主人公とくっつくヒロインも、幼い頃は母親が忙しくて、ほとんど兄に育てられたという状況。おかしなことに父親の影がまったくない。
「宇宙(コスモ)なボクら!」では主人公の母親は病死。その際に魔女の称号を継承することにストーリーは端を発している。父親は仕事で海外へ行き、主人公は親戚の家で暮らしている。その友人も事情は違うが家族とは離れて生活していることが後にわかる。
「GLOBAL GARDEN」は露骨なほど決定的。涙花の両親は離婚寸前だった。それが飛行機事故でまず弟が死に、現場へ駆けつけようとした父親が事故死し、母親は気がおかしくなって、生き残った涙花を弟と思い込む。母親の意識においては死んだのは娘。涙花もそれにあわせて女性としての成長を止め、ガーデンの力で身体の機能を男性に変化させようとまでする。ヒカルの活躍で母親も正気を取り戻し、めでたく涙花も女性として生きるようになるが、どうした運命のイタズラか、母親も事故死。その後はヒカルとロビンとの擬似的な家庭生活が始まり、ラストでは本物の家族になる。
こうまで家族のあり方にこだわるのは、やはり何か意味があると考えた方が妥当だろう。
新作ではどんな家族が登場するか、期待したい。
ここでガラリと家族がお飾りていどになったりしたら……作風もそうとう変わるのだろうな。

at 23:40|PermalinkComments(0)TrackBack(0)マンガ