閉ざされない世界ぞろ目の彼ら

2010年11月09日

美内すずえ「ガラスの仮面」 46巻 感想

前回の記事を書いてから、何だか本当に「1日1回46巻」だった気がする。
これはいわゆるアレだ。「神巻」というヤツでは?(若者言葉に疎いです)

そういえば2ヶ月連続新刊発売の前半戦、45巻は1、2回しか読んでいない。そして今このとき感想を書きたいのは46巻!46巻なのよ!
45巻もついにマヤと亜弓が紅天女の本質に迫っていく描写にそれぞれの個性があって、演劇マンガとして十二分に面白かったけれど、46巻の「マンガ」=エンターテイメントとしての楽しさにはちょっと届かない。

これは最早痛快と言って良い域。
そんな「ガラスの仮面」46巻の感想、いきます。

 

ざっと粗筋でも。ざっとになるかな……。

45巻で失明の可能性を告知されるもそれを振り切って一人別荘に閉じこもり、紅天女以前に女優として生きる道を模索する亜弓。そこへ駆けつけた母・歌子の指導の下、盲目(未満)の女優に必要なスキルを磨く特訓を始める(このあたりが45巻ラストから続いている)。
大女優(という設定だったんだよね。忘れそうになる)歌子とばあやだけに守られた世界で、亜弓はキャンドルの中に座り込み、歌子が投げるヘアピンの音に正確に反応する感覚を見に付ける。 何故キャンドルが必要なのかと言うと、油断すると怪我をするから。らしい。まあ、おかげで炎の揺らぎを気配で察知する事から「炎とは命」という紅天女の生命観を得たようだ。
一方、マヤは黒沼先生や他の役者たち(桜小路君含む)と稽古に励む毎日。そこへ速水真澄の婚約者(こんやくしゃと読んではいけない。フィアンセと読むのです)紫織が秘書と世話役を携えて面会に来る。紫織のたっての願いでお茶するマヤと紫織。しかしそれこそが嫉妬に燃える婚約者のマヤ潰しの始まりであった。
まず、サファイヤの婚約指輪(誕生石らしい。9月生まれでセンチメンタリストなのね、きっと)をあたかもマヤが盗難したかのように見せかけ、帰宅してからショックを装い倒れて号泣。駆けつけた速水さんにマヤへの疑惑を起こさせようとするが、あり得ないと言い切る速水さん。そしてそんな事があった翌日、普通にウェディングドレスの仮縫いに出かける紫織。件の指輪が何故か自分のバッグに入っている事に気付いたマヤがその場を訪れると、2人きりの時とすぐにも速水さんが到着する隙を狙ってまたもくらっと倒れる紫織。受け止めたマヤの手にはブルーベリージュース(もちろん紫織オーダー)。結果的に純白のドレスを紫に染めてしまい、また倒れる紫織さん……と、タイミング良く登場した速水さん、そしてウェディングドレスデザイナー陣に叱られるマヤ。更にマヤがバッグを落とした拍子にコロンと指輪が転がり出、最悪な事態に。マヤは否定するが、速水さんは叫ぶ。「おれを憎め!おれの婚約者(フィアンセ)は関係ないだろ…!」
もう決定的に嫌われたと落ち込むマヤに、トドメと言わんばかりの追い討ちが。紫のバラの人から荷物が届くが、添えられた手紙には「もうファンは止めた」と言う主旨の絶縁状。そして段ボールを開けると、マヤが聖さんを通して速水さんに贈ったアルバム(自分の舞台写真満載)がビリビリに引き裂かれた断片で満たされていたのであった。
これでマヤが絶望している間、たまたま紫織さんの家に紫のバラが業者によって飾られる。紫織さんはそのバラを1本ずつかき集めてチョキンチョキンとハサミでバラを切り落とし、「わたくし、紫のバラが大嫌い…!」と言い放つ…のを偶然目の当たりにする水城くん。
そして悩んだ末にマヤが大都芸能の扉の前で速水さんを待ち構えていると、実は紫織さんと一緒の速水さんだけが建物から出て来る。ここ数日ちょっとビジネスで爆弾を受け取ったりしていた速水さんであったが、ついにここでチンピラ(not暴漢)の襲撃に遭う。卑劣な彼らはマヤをも傷つけようとするが、速水さんはマヤを抱き締め身を挺して彼女を庇い続ける。結果、惚れ直すマヤ。そしてあの紫のバラの人の絶縁宣言は何かの間違いだと確信する。気絶した速水さんから一晩中離れず、阿古夜の愛のセリフを囁き続けるマヤ。そして彼が寝ている間に唇を奪う。
その後は身体に残るマヤの感覚を夢かと疑いつつ速水さんがシャワーを浴びたりプルトップがオールドタイプの缶ジュースを飲んだり聖さんが久しぶりに出てきてマヤの一途さに心打たれたり紫織さんの世話役が速水さんとマヤの手切れ金に1千万の小切手を押し付けたり、やっちまえばこっちのもんよと言わんばかりに、しかし口では「はしたないと思わないで…」とか言いながら紫織さんが速水さんをワンナイトクルーズ(東京湾?→伊豆)に誘ったり、その割に渋滞に巻き込まれて出航に間に合わなくて涙したり、 別行動だったのでうっかり乗船しちゃったけどワンナイトクルーズでロイヤルスイートと聞いて全力で嫌がる速水さんだったりそこにまた偶然マヤが居合わせてお決まりの「マヤ…!これは夢か…!」「速水さん…!紫のバラの人…!」
そして豪華客船アストリア号はザ…ンと東京を後に夜の海へ乗り出すのであった。続く。

……やっぱりざっとなんて書けなかったな……そして突っ込みどころもほとんど書いてしまったような。
いやあ、とにかくシオリさんがかつてない程の頑張りようで、初登場の頃の病弱が玉に瑕なだけで花を愛で音楽に酔うあの深窓の令嬢と同一人物とはとても思えない。やる事はせこいし詰めも甘いが、乙部のりえ以来の本格的な悪役ポジション。そして乙部のりえと張るとしても過言ではない演技力。速水さん、完全にだまされてます。
指輪事件での速水さんは、周囲の目もあった事だし、表面上マヤを責めて問い詰めるしかなくとも、「おれの婚約者(フィアンセ)」には読んでいるこちらが白目です。そしてそのページをめくると、マヤ、速水さん、シオリさん、全員が白目。2ページに渡り全部白目。いくらガラかめと言えどこれほどまでの白目率はレアだ。

で、まあ速水さん、勢いで「おれの婚約者(フィアンセ)」とか言っちゃったけど、実際はマヤを微塵も疑っていないものと思われる。水城さんと「それはおかしい」と言い合う場面できちんとフォローされ、「マヤらしくないし、絶対に変」というのが2人の共通した意見のようだ。安心した。
水城さんに至っては「何か裏がある。女の直感だ」とまで言い切っているが、それなら「わたくし、紫のバラが大嫌い!」とか、シオリさんの車にマヤの写真の切れ端を発見したりしたんだから(ガラかめのセレブな方々は車の中に証拠を落とし過ぎです)、どんなに鈍くても「シオリ様はマヤに嫉妬をして嫌がらせをしている」とごくごくストレートに点と線が繋がりそうなものだが。というか速水さんとそれなりに近しくなったらマヤとの関係が特別な何かだと薄々察しもしないなんて鈍感過ぎる。婚約した時点でもっと速水さんとマヤに関する強力な対策を練るべきだったかと。
まさか聖さんはその一環として桜小路君の写メを速水さんに贈ったのか?敵を欺くならまず味方から、と言う作戦で。確かコーヒーカップがお釈迦になったくらいであまり効果はなかったような気もするけれど。
そしてその聖さんが、あくまで紫のバラの人の誠意と愛情を信じるマヤの清らかな信頼にいたく感銘を受け、「あんな目でまっすぐにむかってこられたら…きっと誰も勝てない…心を奪われる…」と切なげなモノローグ。これでネット上では「マヤ争奪戦に聖さん参戦か?」と話題騒然だが、違うね。これは「きっと誰も勝てない=私はマヤさんには勝てない」「心を奪われる=真澄様の心に私が入る余地はない」ということでしょう。幸せにおなりよ、聖さん……。

そして今回の目玉、ワンナイトクルーズ事件。どうやら本誌連載時とは大幅な変更があるらしく、聖さんのホテルセッティングはなかったことにされているようだ(まあ、ホテルでおやりなさいませはちょっと赤裸々だ)。
しかしこれはもう、はしたないシオリさんの空回りとしか言い様がない。そんな彼女の熱愛を一身に浴びている速水真澄社長(推定31~2歳)、ワンナイトクルーズと聞いて頬を赤らめ、ロイヤルスイートのダブルベッドをスローモーションで確認するやカッと赤面、まっしぐらに帰路を目指す……何という乙女な反応!聖さんのマヤ萌えより、速水さんチェリー説の方が断然信憑性が高い。何しろ嫌がり方が尋常ではない。
カツカツカツカツ(靴の音→ロイヤルスイートのダブルベッド確認)バン(ドアを両手で封印→Uターン)カツカツカツ「急用を思い出した」
本当に結婚する気、あるの?入籍したら嫌でもしなくちゃいけないのよ?心の準備の問題かしら……「おれも男だから責任は取れない」と社務所でマヤに言っていたのは単なる強がりだったのか?

で、そこにマヤ登場でワンナイトクルーズ、スタート……。
ここで「つづく」なんてあんまりだが、今から期待に胸ふくらんではちきれそうだ。きっと47巻の発売日にはツイッターで「マヤと事後なう」とか呟いて……くれないでしょうね。
きっと何かある。絶対ある。または何もない。もしかしたら紫のバラの人バレはあるかもしれない。というか、何か、ナニかあるとしても、きっと朝チュンとか。月影先生と一蓮みたいなのもアレだけど、まず基本的にガラかめは昭和だからね……チンピラ(not暴漢)は昭和40年あたりの、私でも生まれていないような時代のかほりが濃厚だったし。
でもまあ、朝チュンだとしてもそうなったとしたら意外と甲斐性のある速水さん。45巻で異常に鈍感だった月影先生には、いずれ何と報告するんだろうか。マヤと2人で雁首揃えて出向く事になるのは必至。

もう真面目な話、私は女優としてしか生きたくない!の亜弓さんと、速水さんに嫌われたらこれから何を支えにお芝居やっていけばいいんだろう?のマヤ、勝負は出てしまっている気がする。が、黒沼先生が何度か「役者はどんな体験も演技に活かすものだ」と繰り返し仰っているので、
マヤ=阿古夜の恋情や人間らしさ、一途さ
亜弓=女神たる紅天女の威厳や慈愛
というパートで分けて共演しても良いんじゃないだろうか?それぞれ苦難を乗り越えて行く中で心に受けた様々な感情を舞台で再現するには、きっとこれが最善だ。というのが凡人たる私のジャッジである。
速水さんを見てマヤが「これがあなたの真心…!仮面の下のあなたの素顔…!」と悟ったように、マヤはマヤで、亜弓さんは亜弓さんで、ガラスの仮面に透けそうな素顔で演じきる試み、というのは……「役になりきりなさい!」と月影先生に叱られてしまうだろうか?

でも亜弓さんは昔、演技で目が恋してないと指摘されて、リアルでたっぷり恋のレッスンをしたんだっけ。なら阿古夜も充分いけるのかな。間進……が、最初の犠牲者だったっけ。何だか名は体を表すって言葉そのものの、はざまのみをつきすすんだ彼、今頃どうしているんだろう。

 

drecom_neverworld at 17:49│Comments(4)TrackBack(0) マンガ雑談 

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この記事へのコメント

1. Posted by さときち   2010年11月16日 20:32
いとさん、こんばんは。
読ませていただきました46巻!
私もページをめくる手が止まりませんでしたよ・・。

竹竿ギプスやヘレンケラーの耳粘土、泥饅頭を思い出させるような亜弓さんの稽古。
紫織さまのめまいの多さ(もしかして死の病とか・・・)。クルーズ。
47巻はどうなるのでしょう!?

一度手放してしまい全巻揃っていないのですが、再び買い揃えそうになるほど破壊力のある巻でしたね。
「白目率」には気付きませんでした・・・
いと、恐ろ(以下略)
2. Posted by いと(ひのき)   2010年11月21日 17:29
>さときちさん

こんばんは、さときちさん。
ふふふ、お読みになられましたね、衝撃の46巻。
大丈夫!手が止まらなくても床は大理石よ!(意味不明)

歌子さんがあんなに活躍するなんて、意外でしたね。サリバン先生降臨、っていう感じで。あのスパルタ式は師匠・月影先生から受け継いだんでしょうね。
シオリさん、あんなに号泣する元気があるなら眩暈の1つも起こさずに12階のトイレまで口紅取りに階段で昇って行けそうです。
47巻は本当、いろんな意味でどうなるんでしょう…とりあえずいつ出るか、そこをはっきりさせてくれればと。私は待ち切れないので雑誌で読んでしまうかもしれません。

ああ、同じく揃え直したいです!そうしたらこの両腕に抱き締めてもう二度と手離さない、私のおまえさま!って言いたくなるくらい燃えさせてくれる新刊でしたねー。参りました。

白目率は私も2回目ぐらいに気付きました。というかあのお店の名前のスペル(Beaming)を見て、シオリさんの真っ白な眼光のことかしらと思ったり…話題が尽きませんね、46巻(笑)
3. Posted by 夏月   2010年11月21日 21:35
いとさん、初めまして。
今回の46巻を読んで誰かの感想を聞きたい!!と思い検索したらこちらにたどり着きました。
まわりでガラカメ読んでいる人が居ないので感想を言い合えないのが寂しいです。
私は小学5年生の時友達から借りて読んだのをきっかけにハマリ(その当時で20巻くらいまで出てたかな?)その後、自分で買って読む様になり、20何巻かは古本屋で大人買い(もっとも、その当時は大人買いという言葉もありませんでしたが。)
子供を出産した40巻あたりまでは年に2~3度は1巻からぶっ通しで読んでいましたが、出産後はなかなか1巻から読みふける時間が取れません。だから、近年では新刊が出るのを何ヶ月も何年も今か今かと待ち望んでいて、今回2巻連続で出たのがメチャクチャ嬉しかったです。しかも、46巻の最後!!マヤと速水さんどうなっちゃうの?o(^-^)o
とドキュンコもので何度も読み返しちゃいました。早く47巻読みたいです!!
その時はまたいとさんの感想も読みに来ます!!なんか長々とすみません。ホントはまだまだ語り合いたいです(*^^*)
4. Posted by いと(ひのき)   2010年11月23日 21:32
>夏月さん

はじめまして、夏月さん。
コメントありがとうございます!嬉しいです。

夏月さんもガラかめ歴の長いお方なんですね。同志ですね!
私も小学校低学年からずっとガラかめを読んでいて、演劇部にまで入ってしまったほどはまりまくっていました。
リアルタイムで買うようになったのは30巻前後でしょうか…ちょっと手元にコミックがないのではっきりしませんが、「忘れられた荒野」で台風の中、速水さん徒歩で劇場に辿り着いた場面が収録されていたと思います。
その辺りから新刊発行がゆったりペースになって、40巻以降はもうネタマンガの様な面白さで半ば失笑しつつ、やはり1巻から夢中で読み返したりしてしまっていました。

大体夏月さんと同じテンポで読んで来たと思うんですが、今回の46巻は本当にすごかったですよね!45巻と連続刊行というのもすごい!
47巻、すごくわくわくしますよね。どうなるんでしょう…ラブストーリー一色でもいいです。もう何でもいいです、ガラかめなら(でも亜弓さんの修行は見たい)。
願わくば、47巻の発売までこのブログが存続していますように…気まぐれなので(笑)

よかったら、どんどん語り合いましょう!47巻までなんて待てませんよ!
雑誌を買う予定なので、とりあえずそちらの感想をアップするつもりです。もうコミック派では満足できません。
あ、でもネタバレすると思いますので、ご注意下さいね。
ではでは。

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